ユメル 両腕断線 センサー破損 電池ボックス修理

ユメル

ユメル 両腕断線 センサー破損 電池ボックス修理

当医院では、ご依頼の少ないユメルの修理依頼です。過去に2件しか実績がありませんが、お子様が長年慣れ親しんできたとのことで大変お困りとのことです。

早速ですが、依頼時の故障の症状としては、以下の通りです。

  • まぶたが動かない※最悪、まぶたは動かなくてもよい
  • 両手の押しボタンの反応がない
  • 電池ボックスの蓋が破損し電源が断続的にON/OFFを繰り返しているようだ

さて、症状を確認します。

ユメルは、白目と黒目のデザインが逆なのですが、白目の塗装が無くなっていますね。画像にはありませんが、白目は、シールで作成し貼っておきました。

電池を入れてみても何か発声した後、うんともすんともになりました。当初、うんともすんともであったので、電子回路側にも問題が出ているのかもと調べてみたのですが、取り扱い説明書を読みと起動後、どちらかの手を押すことで反応するとありました。

実は、プリント基板上のクリスタルが発振していないので、もしかするとクリスタルが破損しているのかもと思ったのですが、どうもこのユメルは、電源を入れた直後は、既にスリープしていて、スリープは、COB内部のRC発振でスリープ状態です。両腕のスイッチの反応がwake upトリガーになり起きるのですが、その際に外部発振に切り替わるようです。電池を長持ちさせる工夫ですね。

で、ここで両腕のスイッチを押してみてもやはり反応はありません。早速内部の状態を確認します。

結束バンドと電池ボックスの蓋止め

電池ボックスの蓋は、コインなどで回転させると内部のツメで蓋と止めるようになっています。この蓋は、蓋開閉を検知するスイッチにも連動しており、蓋が不用意に開くと動作が止まってしまいます。故障の症状である断続的に動作が不安定な理由はこのためですね。

蓋の修理方法は、後にとっておきます。次にぬいぐるみを剥がします。

おもちゃドクターの皆様であればご存知かと思いますが、この手のおもちゃは、だいたい結束バンドで筐体にぬいぐるみが固定されています。ユメルも同様なのですが、使用されている結束バンドが市場に流通していないため、修理後に再度結束する際に困ります。結束の固定部分が小さくバンドが長いものが、ほんと無いんですよね。因みに、ユメルの場合、最低でも40cmは必要です。自分は、2本の結束バンドを太目の針金で結束して長くして使っています。

破損

何とか流用できないかこじって開いてもツメがボロボロになってしまいます。さっさと切手開きましょう。

断線

他の修理記事と同様に稼働が頻繁にある両腕のスイッチと腹部のセンサーはやはり断線しています。

スイッチ

スイッチを手先の袋から取り出し結線します。黄色が左腕で青が右腕です。腹部の圧電素子にもぺっちゃんこでした。交換が必要です。

左:瞼開閉用のトルクギア、右:腹部圧電素子

次に瞼の開閉ですが、頭部を開封すると、開閉用のトルクギアの一部が割れています。このトルクギアは、瞼を手で押さえたりしてもギアが破損しないようにトルクを逃がすようにトルクギアが使用されていますが、綺麗に縦割れを起こしています。※恐らくお子様は動く瞼を手で動かしたり抑えたりしたのかもしれませんね。

困りました。このトルクギアは、片側に万一過剰なトルク起きた時に空回りできるよう溝が切ってあるのですが、この溝にあうようなギアは流石にありません。うーん、困りました。最悪、瞼は動かなくてもといことですが、ゆめる君は、寝たり起きたりという動作もするので、やはり瞼を動かしてほしいですね。悩んだ挙句、溝にあるギアを手持ちのギアで作成することにしました。

加工ギア

歯数は、10T。シャフト径は、1.9mm。モジュールは、0.5のギアが合います。トルクをつなぐ溝ですが、十字に切られた溝にあるように加工しないといけませんが、ここは無理やりルーターで切削加工します。

切削加工

ちょうど十字の溝にあうようにできるだけ頑張って加工しましたが、やはり手加工での精度には限界もあり、ご依頼様には耐久性は出来高とさせていただきました。無事、まぶたも開閉するようになりました。やはり開閉した方がいいですね!

腹部センサー

手持ちの圧電素子は、少し大きめのしか無かったので、それに交換しましたが、収める網の袋が小さいので、次回までにもう少し小さい圧電素子を用意しておこうと思います。

さ、さ、さ、懸案の電池ボックスの蓋をどうしましょう?

蓋を止める折れたツメの残骸はなく、調べてみると電池ボックスの内部側にも固定板を別途設置できるスペースもありません。苦肉の策として、表面の本来コインを挟む溝に1mmの銅板で蓋の抑えを接着固定しました。マイナスドライバーが差し込めるスペースのみを残し後の溝は、全てエポキシで埋めて固着させました。回転する筐体には接着剤が付かないよう注意が必要です。

電池ボックスの蓋止め

さて、動作確認をします。不安定な動きは、電池ボックスの断続的なON/OFFのようなので、蓋を固定した状態で数日、寝起きを動作を観察します。

最終的に3日程観察したのですが、二日目に突如予定起床時間前に起き上がりました。設定時刻を確認すると、やく1日ズレています。なのと!体内時計が狂っていそうです。しかも進んでいる。と、ユメルは、『もう寝る時間だよ。』とまた眠ってしましました。

なぜなんだ、どこが故障しているんで、先のスリープ中のRC発振回路?でも回路仕様なんぞ手元に無いぞ、、、。と悩んでいること数時間。

するとなんと、正常な起床時間に起きました。何事もなかったように。

もうなんだか原因が分かりません。また一両日様子見です。

ここで、一両日中に以下を観察します。

  • 留守電モードで強制的にスリープさせ、現在時刻の狂いが生じるか確認する
  • 起床、就寝後も現在時刻に狂いが生じていないか確認する

と、ここまでさらに確認作業を継続したのですが、現在時刻の狂いは再発せず、何とも先の不可思議な現象は迷宮入りとなりました。

縫合

最後に綺麗に縫合をして修理完了です。


時間認識も各種センサー反応も瞼の稼働も、機能的に問題なく、感謝するばかり です。 (電池ボックスの使用感、これ以上ないくらい良好です)

今回のユメルの修理、本当にありがとうございました。

~ご依頼者様のご感想より~