アナと雪の女王 クレーンキャッチャー 修理

クレーンキャッチャー

アナと雪の女王 クレーンキャッチャー 修理

地域で外来勤務しているおもちゃ病院のヘルプとフォロー要請がありました。

修理に際し、内部構造など、情報共有をさせていただきます。

当初、前任ドクター2名からのバトンタッチという流れで応しました。

さて、経緯を少しお話しすると、当初の故障の症状は、景品を拾うアームが動かないという症状のみだったようです。(前任ドクター談およびカルテより)

ですが、私にヘルプ要請があった際は、景品の乗せて回るターンテーブルが動かないという要請のみでした。

では、ターンテーブルが動かないという前提で診察を開始しました。

まず、電池の容量を確認し動作確認します。

電源をいれるとアナウンスと共に”ガガガガ”とギアがズレて滑っている音がします。

ギアズレ

あれ!?

ターンテーブルが動かないって言ってたけど、違うじゃない。。。

どちらにしても、この”ガガガ”という異音の原因を探ります。恐れく、このガガガ”という異音の原因は、元のギアボックスが、ターンテーブルを回していると思いますので、その線で探ります。

まず、ターンテーブルを駆動しているギアボックスとモーターは、本体底面にあるので、底面を開封します。

制御基板

全ての動作は、この制御基板で制御されております。ICとその下部にモーター用のドライバが2個みえますね。

ドーム開封検知スイッチ

景品が入っている透明のドームは、外されていると動かないように検知スイッチがあります。修理の際は、外して洗濯バサミなどで挟んでおくと作業しやすいです。

で、肝心のギアボックスのモーターは、中央のモジュールになります。

ギアボックス

ここで、この仕組みを知らないと底面のネジを全て外してしまいそうですが、その必要はありませんでした。

青丸+黄色丸のネジ・・・ギアボックス固定ネジ

ギアボックスを外す際は、このネジだけで十分でした。

黄色丸のネジは、表面のアームの支柱を固定しているネジなので、アームのみを外して修理する際は、黄色丸のネジだけで大丈夫です。

では、今回は、ギアボックス内を確認するので、青と黄色のネジを全て外します。

ギアボックス内

おや?

特に不具合は無さそうですね。モーターも導線を外して電圧を別途印加してみると良好に回転します。

ギアボックス動作

問題ないよね?

あれ?さっきの”ガガガガ”って鳴ってないし。

おもちゃ修理あるあるで、一度分解し組み立てたら動き出したってやつかもしれないので、もう一度組み立てて動作を確認しましたが、やはり”ガガガガ”と鳴ります。

これは、底面のギアボックスの問題ではなさそうです。

スライドテーブルの回転軸

調べたところ、景品を前に押し出すスライドテーブルは、回転軸が円盤の円周を移動することによって、上部のスライドテーブルの横溝を左右になぞり回転運動から前後運動に変換されておりました。

で、その回転軸が、溝から外れて変な場所に引っかかったいたために先の”ガガガガ”という異音を鳴らしておりました。

溝に軸をはめることで無事にターンテーブルもスライドテーブルも稼働するようになりました。

当初は、ターンテーブルとスライドテーブルが動き出したので、もう修理は完了と高を括って動作確認をしました。

すると、アームが降下しだし景品を拾うと思いきや、ショベルが動きません。

( ,,・ω・´)ンンン?

再度チャレンジすると、今度は降下したアームがスライドテーブルの縁に衝突します。

( ,,・ω・´)ンンン?

おかしいぞ、故障はターンテーブルだけど聞いていたのに、アームの動作もおかしい。。。

( ̄▽ ̄;

仕方ないので、アームの動作不良も拝見しましょう。

おかしい動作のポイントを整理します。

  1. アームが降下する際にアームの先がスライドテーブルの縁にぶつかったり、ぶつからなかったりと動作不安定である。
  2. 景品をすくうショベルが全く動作しない。ピクともしない。

アームの稼働を制御するギアズレと断線が懸念されます。

と、ここでカルテを拝見すると、既にアーム内の故障修理も実施済みとのこと。拝見すると、導線の全てが断線していて、それを再接続したとあります。

なるほど、断線が再発してのかもしれませんね。では、分解して確認します。

アームの支柱固定ネジ

アームを分解する際は、支柱を外す必要はありませんが、外す際は、黄色丸のネジ4箇所は外します。

また、景品が滑り落ちる滑り台を固定している、黄色丸のネジ4箇所も外します。

支柱を外すと作業性がアップしますが、外さなくてもアーム内は分解できるので、作業者の好きな方法で行ってください。

こんな感じで外せます。

まず、アームの肩にある稼働軸に長めのネジでネジ止めされているので、それを外し肩から肘までのカバーを外します。ネジは、4箇所とツメで留めてあります。

キックバネ

すると、肘に肘から手先に動力を伝えるギア数個とキックバネで留めてるギア2枚があります。黄色矢印のキックバネは、外れておりますが、正常な場合は、外れていてはいけません。外れていた場合は、何らかの不具合が出ている可能性が高いです。

ですので、今回もこのキックバネが、外れていたので、故障原因の一つであることが後に判明しました。それと知らずに、分解でバネが外れてしまったのだろうと誤認しアームの先の分解を進めました。

分解を続けます。

肘から手先にて、ショベルを稼働させるギアボックスは、各ギアとモーターを検知用のマイクロスイッチ2個で構成されています。

マイクロスイッチ
ギアズレ

ギアが噛み合っておりません。断線修理の際にはめ込む位置を間違ったのでしょうね。ハメなおします。

モーター用の導線が、2本。マイクロスイッチ用の導線が4本の合計6本の導線が、本体からアームの先まで配られております。途中、アームの関節の稼働もあるので、断線が起きるのは、必然のように感じますね。で、モーター用の導線の断線が再発しておりました。

モーター断線

1本は、モーターの電極根本で1本は、断線処理した収縮チューブの中で起きておりました。

マイクロスイッチ

マイクロスイッチの導線も取れていますね。

このマイクロスイッチは、ショベルの開閉で拾う時の検知と落とす時の検知に使用されております。

心配なので、6本すべての導通を基板端と導線の先端でチェックし、数か所で断線が再発しておりましたので全て再接続しなおしておきました。これでアームは大丈夫だと、またもや高を括っておりました。

(T_T

断線の接続をしなおして分解したアームを組み立てし直していると、前述のキックバネが、どうしてもハマりません。

なんかおかしいよね?

引き継いだ際に収められていたバネではあるので、このバネが元々から付いていた正常なバネと信じて疑わずに装着を試みました。

外側ギアの穴に収まるバネの曲げがあるので、その穴にバネを引っかけてもなんかおかしいです。この状態でアームに取り付けても、アームがスライドテーブルの縁に衝突します。

( ,,`・ω・´)ンンン?

どう取り付けるんだ???

取り付けては動作確認してやり直しては動作確認をしての繰り返しで丸一日費やしました。

結論としては、元々ついていた正常なバネと信じていたバネですが、サイズがおかしい点や加工痕があったので、これは加工でもしたのかもと推測しました。

かなりの疲労だったので、メールで『もしかしてバネを加工でもされましたか?』と投げて就寝しました。

翌日の回答で、持ち込まれた際に元々付いていたバネが破損していたので、代替えに流用できそうなバネを加工して付けていたそうでした。詳細内容をお聞きせずに引き継いでいたので、コミュニケーションミスが起きてしまいました。

( ̄▽ ̄;

※もっと早く気付くべきでしたが、このバネは正常なバネではありませんでした。

2つのギアの動力を伝え、かつ余ったトルクを逃がすための構造なので、2つのギアのツメをキックバネが、両側から挟む構造が正解です。実は、参考用にと持たされた別の正常なクレーンキャッチャーがあるので、同じ箇所を分解し確認すると、なんとバネが違うではないですか!

ほらね。挟んであるでしょ。

参考機種

外側のギアにある穴は、製造上の穴でバネを引っかけてたりするためのものではありません。全くの無関係でした。

ギアをバネ

上が、動力を伝えるギアで外側のギアが、動力の元で内側が動力が伝わるアーム側となります。下が流用バネ。

さてさて、バネが純正品ではないので、どう補修しようかという計画から練りなおします。

サイズ的にあうキックバネが、入手できれば交換しますが、そんな運よく見つかるはずもありません。

余ったトルクを逃がす機能は捨てて2つのギアをツメの部分を針金で固定するという案を検討しました。

イレギュラーが事態に備え余ったトルクを逃がすための機能ですが、アームの昇降時に何かを挟めたり引っかかったりということが起きた際は、直ぐ電源を切りアームを正常に状態に戻してもらうという、運用上の制約を持たせることで対応してもらいます。

そこで、針金で固定をしてみたのですが、この案もダメでした。

固定自体はできるのですが、稼働に耐え得る太い針金を選択すると、ガタが大きく、そのガタのせいで、これまた、アームの降下時にスライドテーブルの縁にこすりつける事態になりました。どう調整しても回避することができませんでした。

やはり、キックバネでの補修が必要そうです。

仕方ないので、工具用のペンチや剪定ばさみ用のバネを扱っている近くのホームセンターで物色していると、なんと使えそうなキックバネが、あるではありませんか!

キックバネが

内径が、8mmなので、内径を広げる必要があります。また、ループ回数が3巻きで、このまま挿入すると、高さが高すぎてギアボックスのカバーに干渉します。

3巻きを2巻きに加工し高さを低くしギアのツメ位置で折り曲げるように加工します。

バネは、とても固くギアもはめ込んだままペンチで加工すると、プラスチック製のギアのツメが破損し、終わりの世界になりますので気を付けてください。

慎重に慎重にかつさらに慎重に加工作業をします。

加工キックバネとギア

サクッとやってそうですが、かなり難易度高いです。このバネの金属は、バネ用のステンレス鋼なので、ラジオペンチなどでの加工は難しいでしょう。

このキックバネを利用した稼働のメカニズムを動画で紹介します。

余分な稼働の力を逃がしギアを保護してくれます。

以上、長きにわたり盛りだくさんの作業でしたが、無事アームの稼働位置調整もできました。