もっとおりこうおやすみユメル 音声不具合 修理

ユメル

先日修理依頼のありました、ユメルくんとはバージョンに異なるユメルくんの修理依頼となります。

先にお伝えしますが、当医院での診断の結果修理不可能という決断に至りました。他医院の先生向けに情報共有をさせていただきます。

故障の症状は、乾電池とボタン電池の交換後に発声の音声がとても小さくなり音割れしているかのようになり、まったく聴き取れなくなってしまったとのことです。他の動作は問題ないとのこと。

届いてすぐ電源投入し音割れを確認しましたが、ご依頼内容の通り、耳をそばだてないと聞こえないくらい小さくしかもノイズが入り交じり雑音だらけでした。スピーカーの不具合かもと推測を立て開封します。

ですが、このユメルくん先のユメルくんとは異なり開封がとてもたいへんです。スピーカーは、頭部に中にありその頭部も縫い合わされた顔面の表層を縫い目に沿って糸を切り開く必要があります。しかも、切り開けても頭部をネジを外すには、胴体も開封しなければならないという代物になります。

開頭手術

さて、無事開封できたところでスピーカーを検査しますが、まったく動作に問題ありませんでした。( ̄▽ ̄);

手持ちの検査器においても再生音がきれいに聞こえ、インピーダンスをマルチメータで計測しても32オームを表示します。

スピーカー

では、次に音声の再生回路を回路図に起こします。

音声回路の再生&増幅回路

COBから出力をRCフィルタを通し、NPN 8050トランジスタで増幅するというおもちゃでよくみる回路構成です。

スピーカーに問題がないので、COBから出力を耳とオシロスコープで確認します。

8050に印加されているベース信号を手持ちのクリスタルイヤホンで聞いていますと、ノイズもなくきれいなユメル君の声が聞こえます。COBの出力も問題ないのかと高をくくっていたら、オシロ波形で問題が分かりました。

音声波形

ベースへ印加するバイアス電圧が、0.456Vと低すぎます。クリスタルイヤホンは、感度がいいので辛うじて聞こえたんだろうと思いますがコイル式イヤホンでは、聞こえなかったのかもと思います。

このベース電圧では、8050の閾値を超えることはできないので、 ベース電流も流せずで音声の増幅もできないと思います。

Vpp振幅

また振幅もPeak-to-Peakで0.488Vとこちらもまた小さいです。先のノイズは、恐らくPeak付近で0.6Vを超えたりするだろうから、8050がスイッチONし音声に連動した波形上側のプチプチノイズを出していたのでしょう。

なら、8050 NPN トランジスタの特性変化も疑い、基板から取り外して検査しても問題ありませんでした。

トランジスタ検査器
バイアスグラフ

通常は、Vin-Voutの関係グラフのトランジスタの直線領域を使って増幅しますが、バイアスがシフトしてしまったので、振幅が取れなくなります。

まとめると、COBからの音声出力信号が、何らかの原因で小さくなっており、8050では増幅できなくなっている。COBの仕様が分からないのですが、IOの劣化不良が懸念されます。IO回路のESD保護ダイオードにリークが発生し、IOLH, VOLHの特性が悪くなりフルスイングできなくなっているのではないでしょうか。※玩具向けなので、信頼性的な検査も設計も恐らくしていないのでしょう。

さて、通常ですとここでCOB不良として修理不可能で終了となるのですが、先の微小振幅の波形を何とか増幅できないかと検討してみました。

要件は、以下

  • ユメル内蔵の電池ボックス 6Vで駆動できる方法
  • 数百円から掛かっても1000円程度で実現できる方法
  • 筐体のスペースの制約からIC1個と周辺パーツで構成できること

ですが、手持ちのオペアンプも限りがありますので、3回路を試行しました。

LM358

LM358

LM386

LM386(データシートの推奨回路)

結論は、どちらも実用レベルでの増幅は不可能でした。やはり入力レベルが低すぎてまずは前段で電圧をもちあげないとだめですね。

最後に、ダメ元でS8050をダーリントンで構成しましたが、閾値を超えないのでこちらもだめでした。ということで、残念ではありますが、修理不可能として返却をさせていただきました。