アンパンマン おしゃべりいっぱいことばずかんDX 昇圧電源配線故障修理

DXデラックス版のタッチペンの修理依頼がありました。

今夏まで動作していたそうですが、急に起動しなくなったそうです。

全くのうんすん状態です。

タッチペンでよくある故障の電源スイッチの接触不良や電池ボックスの液漏れ腐食も懸念されます。

開封し内部を確認しますが、液漏れの腐食もなく電源スイッチの接触不良もありません。

基板端で正常値の電圧が上がっております。

では基板を外して眺めます。困ったときはこれに限ります。

昇圧コイルの裏面のGND面に腐食のような痕があります。GNDのベタ面かレジスタなのかまでは不明です。

昇圧用のコイル鳴り防止用のシリコンがVIAの穴を伝って浸食したようです。

ですが、このGNDの配線自体には致命的な影響はしておりませんでした。

電源の給電回路を解析します。

SoCやイメージセンサー向けに乾電池の3.0Vを3.3Vに昇圧しております。

SL刻印のショットキーバリアダイオードと2L7Rのステップアップコンバーターです。

この昇圧回路は正常に昇圧電圧が出ております。この昇圧電圧3.3Vが各半導体に供給されております。

で、その横のCNP2刻印の電圧検出ICが目にとまります。

LN61C系の2.2v検出用のいわゆるリセットICで乾電池の3.0Vをモニターしており、2.2vを下回った場合、Voutを0Vに落としネガティブ信号としてMCUのシステムリセットに使用します。※低電圧検出用ですね。

さて、このVinは、正常に3.0Vが印加されておりますが、Voutが、0.6V程度です。

おっやー?

このリセットICの挙動が怪しいですね。0.6Vですと、制御ICが、ずっとリセットしっぱなしかもしれません。

ですが、アンパンマンのタッチペンでは、乾電池の容量が低下した場合は、『乾電池を交換ししてね』といいますが、リセットがかかりっぱなしではあるかどうか分かりません。

というかシステム仕様が不明です。

まず、目視でも問題ありませんでしたが、半田クラックも懸念されるのでSOT23の3端子とも半田を溶かしなおししてみます。

すると!

何か反応しだしました。

ですが、再起動を繰り返します。

動作確認

一旦電源を完全に切り再起動させます。

すると、今度は正常に動きだしました。

動作確認

うーん、何か釈然としませんが、このまま時間を置きます。

このような場合、半田コテの熱で一時的に回復はするが、たいてい時間を置くと再発します。

で、翌日様子をみると、、、再発しました。全くうんともすんともです。ほら、やっぱりね。

というか、どうも先の再起動を繰り返す動作もあり不安定な挙動です。

先のリセットICの電圧とも挙動が一致しません。

何か、もっと深い原因があり、今々見えているのは、その一端だと思います。

再半田したペーストが基板に残っているので、フラックスクリーナーを吹くとまた再起動を繰り返すようになりました。

全くもって不可思議です。この状況で要因をひとりブレストします。

  • まったくうんともすんともである原因は、主電源が上がっていないのか、電圧検出信号がないためのどちらかか両方ともが原因
  • 再起動を繰り返す原因は、主電源が不安定でリプルしているかもしれないか電源補償用の電解コンデンサーが劣化して容量が低下しているかESRが劣化している
  • 再起動する場合は、かならずスピーカーからの発声に連動しており、スピーカーが駆動するタイミングと何か関係している
  • スピーカーを一旦外すと無事起動終了し待機状態まで進行する

オシロで波形品質も確認します。

3.0Vでは、起動しないか起動しても再起動を繰り返すようです。

もう電源がめちゃくちゃですね。発声のタイミングと連動しています。

次に先のLN61CのリセットICのVinとVoutを観測します。

黄色は、Vinの主電源で水色は、Voutの検出信号です。

電源スイッチをOnにするタイミングで瞬低し復帰しますが、Voutは、リセットの閾値である2.2vを復活しても元も戻りません。うんともすんともの原因は、Voutが復帰しないため、どうもシステム用の制御ICが停止していそうです。

また、このLN61CのICチップは交換用のチップもないので、故障の切り分けのため、SOT23のICを外しVinとVoutを短絡してみます。

本来は、電源の低電圧検出用なのですが、本ICが何か悪さをしていないかだけの確認なので、チップを外しリード線で短絡してみましたが、何も変わらずでうんともすんともです。Voutも2.2V以上の3.0V供給されていますが変わりません。

おや!?怪しいとみていたLN61C回りはどうも白のようですね。

そうすると、元々の主電源の品質が悪く、そもそも正常に起動していなかったという可能性が高くなってきました。

ここで主電源の電解コンデンサーの劣化を懸念し交換してみます。

基板には、3個の電解コンデンサーが並んで付いており、並びの両端の100uFと47uFが、システム側の電源補償用です。真ん中の47uFが、3.0Vの電源補償用です。さくっと交換してみましたが、改善しません。電解コンデンサーの劣化も白でした。もちろんですが、容量とESRはチェック済みの良品を事前には確認済みの部品に交換しています。

が!この両端の100uFと47uFの電解コンデンサー端の電圧が低く出ております。

あれ?昇圧IC端の電圧は正常なのに、電解コンデンサー端で異常が出ております。何か主電源が昇圧された後と電解コンデンサーまでの経路に何かありそうです。

そこで、判断材料をもっと得るために電源供給を安定化電源から供給し3.0Vよりも少し上げてみます。で昇圧回路の電圧と電解コンデンサー端の電圧をモニターします。

3.0V・・・起動しないか起動できても再起動の繰り返し。昇圧後の供給電圧が電解コンデンサー端では、-0.2V程低下。恐らく、供給電流不足のようだ。

3.1V・・・起動の安定度がアップするが、音声に雑音が入り再起動することもある。昇圧後の電解コンデンサー端では、やはり-0.2V程低下。ここでも恐らく、供給電流不足のようだ。

3.2V・・・正常起動する。昇圧後の電解コンデンサー端でもやはり-0.2V程低下。ここでやっと、供給電流が満足したようです。

先の昇圧回路の出力電圧はモニターしましたが、どうもこの電解コンデンサー端の電圧の降下が問題のようです。本来3.3vを供給しないといけませんが、-0.2Vの低下で3.1V程になると、供給電流不足でどうも挙動が不安定になります。

昇圧ICであるSOT23の端子をチェックすると正常電圧に昇圧されておりますが、電解コンデンサー端で異常な電圧になるので、この経路を調べます。

コイルの振動抑制のために塗布されているシリコンのシール材の下に基板の配線があります。

よく聞くACアダプターや電源回路などである、コイル鳴りもコイルによる振動が原因で可聴域の周波数で伝わったというやつで、そのような振動で基板の半田クラックを抑制するためかと思いますが、反面今回のような配線の腐食につながってしまいました。

昇圧回路のICを外しVIAを確認します。

ここで、電解コンデンサー端とこのパッド間の抵抗をチェックすると、数kΩの抵抗値を示します。

おおおー!これだー!

長かった。調査を開始してから3日も掛かってしまった。

シリコンのシール材の直下の配線とVIAがシリコンのシール材で腐食し抵抗成分をもったのでしょう。この抵抗成分による電圧降下でシステムに使用されるシステム用電圧3.3Vが3.1vに低下し、抵抗成分で電流も大きく制限されてしまうので、不安定な挙動を示していたと思われます。

ギリギリ電流が間に合えば再起動程度まで復帰できたが、そのほとんどは、起動できない場合であったようです。

再起動を繰り返したり、音声用のオペアンプで発声に連動し電流がさらに食われると顕著に不安定さが現れるのですね。

スピーカーを外した際に起動シーケンスが進行したのも納得できます。

そこで問題の基板の配線と並行になるようにリード線を追加します。

これにて全く問題なく起動し絵本の絵柄にも反応するようになりました。

動作確認

かなり難航しましたが、観測された事象から原因を推測し、一つづつ確認し排除することで主因を突き止めることができました。