ソニートーキングカードプレーヤーCP-1200 磁気ヘッド移殖修理

CP-1200の修理不可能であった事例紹介です。

立て続けに2件の事例でまったく同じ磁気ヘッドの故障でした。

過去に数件同じ症状を経験しているので、もう持病といってもいいと思います。

もちろんですが、磁気ヘッド故障の起きていない機種を修理できたことも多いので一概に言えないですが、症例としては多めですね。

アンプ回路にも故障があり故障部品一式を交換し、まずは音声を増幅できるまで修理を行います。

次に磁気ヘッドは治具で動作を確認したのですが、やはり音声が小さくボリューム最大で何とか使えるレベルとなり、サーというノイズも一緒に増幅されて使い物にならないという次第です。

因みに、磁気ヘッド故障の機種は全てCP-1200のマイナーチェンジ後のようです。

多数のCP-1200を診ていると分かるんですが、カードの駆動方針が量産途中のロットで仕様変更が入っています。

初期ロットは、カードを駆動するゴムローラーと磁気ヘッドにカードを密着させるピンチローラーがCP-1100と同じく一体化で制御されており、マイナーチェンジ前は、ゴムローラーがカード駆動と磁気ヘッドとテープの密着を兼ねているタイプとなります。

マイナーチェンジ後のロットでは、本記事同様に磁気ヘッドとカード駆動が分離制御されております。この方式での磁気ヘッド故障が多いです。

立て続けに2件で磁気ヘッド故障にみまわれてしまい少々意気消沈しております。

依頼者様のたってのご希望で磁気ヘッドの移殖も踏まえ修理に挑みました。

故障は多岐に渡り、いろいろたいへんではありましたが、思い出のお品物ということで、気合を入れて是が非でも修理をします。


故障箇所を一つ一つ診ていきましょう

まず、筐体のあちらこちらで割れや破損があります。

カードを差し込み挿入するスリット部に破損があります。

このスリット部もたいへん脆いです。

カードがスライドする際に正常位置にアライメントする役割も兼ねているので、このスリット部品は部品取り機から移殖します。

筐体の端も割れていますね。

CP-1200の筐体は、経年でとても脆くなりますので、落下や衝撃ですぐ割れてしまいます。ネジ締めだけでもすぐ破損してしまいます。

↓これです。

ネジを回したとき、バキっと音がすると支柱が折れていたりします。

しかも、、、

ネジも曲がっておりました。

これは落下か衝突時の衝撃でネジが曲りしかもネジ受けの支柱も折れてしまったという事態ですね。

曲がったネジは、部品取り機から移殖しますが、折れた支柱は接着などでは強度的にダメなので、カバー丸ごと部品取り機から移殖しようかと思い、依頼者様に相談したところ、できるだけ現状を残せるだけ残して補修して欲しいとのことでした。

やはり思い出のお品物なので、現状を残したいお気持ちは大事ですので、支柱の補修策を検討します。

補修は強度も兼ねないとイケませんので、折れた支柱を両側からネジ止めします。

UVレジンやエポキシ接着剤、プラリペアなどの補修材は無力です。

ネジ止めの力であっさり破損します。

鉄製のネジです。一度曲がってしまっているので、部品取り機からネジを移殖します。

筐体の折れた支柱の裏側にM3のタッピングネジを打ち込んで支柱を両面から固定します。

今までなかった場所にネジがあるので、依頼者様にはご了承をいただいておきます。

慰め程度ですが、接着剤を隙間に盛っておきます。

接着剤が固着するまでネジ止めして固化を待ちます。

こんな感じになりますが、補修後に問題が発見されました。

両側からねじ込むのでネジが奥までねじ込めなくなりました。

そこで、M4のスペーサーを適宜パイプカッターでカットして固定できるようにネジにハメてねじ込みます。


次に割れ箇所の補修をします。

まず、割れたスリット部品を綺麗に外します。

無理に外すと他の箇所も割れてしますので、慎重に作業します。

裏面が熱したコテで溶かし固定されているので溶解した突起を削り外します。

次に移殖部品も綺麗に外さないとイケません。

綺麗に外せました。

かなり神経と使いました。

ここも慎重にはめ込みます。

はめ込んだ後は、削った突起部に接着剤を流し込み固定します。

バッチリ綺麗に仕上がりましたね。

次に割れた破損箇所の補修です。

割れは、ワイヤー固定してエポキシ接着剤を盛って固定します。

割れの補修は以上で完了と思いきや、アルミのパネルの端が剥がれかけています。

CP-1200のパネルは、経年で接着剤が劣化し剥離します。

依頼者様で以前既に一度接着した痕がありますが、その痕ごと剥がれてしまっております。

接着剤の残りは綺麗に削り接着剤の食いつきをよくします。

アルコールで汚れも落としピッカピカです。

電池ボックスの乾電池を抑えるスポンジも交換します。

これで筐体側の補修は完了です。

次に本体内部の機構部の修理に取り掛かります。


まずは、当然のごとくゴム系部品の劣化があるので交換をします。

劣化で固化して伸びてもいます。

マイナーチェンジ後のCP-1200は、ゴムローラーのサイズが半分です。

これは、前述のカード駆動と磁気ヘッドのピンチローラーが分離されているからです。

このゴムローラーも表面がツルツルになっていますので交換します。

ゴムベルトの機構部も劣化したグリスを交換し金属部の汚れもルーターで研摩してピカピカにします。

ここまで作業し組み付けカードの音だし確認がやっとできるようになります。

依頼者様のところで、カードの引き込み以外にも音がでずボリュームを効かないとお聞きしておりました。

まず、磁気ヘッド、アンプ部、スピーカーなど確認します。

まず、電子回路の増幅回路に問題があります。

スピーカーは、インピーダンスを計測し音出しも問題ありません。

ですが、ボリュームMaxでもウンスンです。

これオカシイです。ホワイトノイズすら出ていません。

調べてみると、アンプに故障がありましたので、ACカップリングコンデンサー全てとパワーアンプ部の周辺コンデンサー、プリアンプ部のダーリントンのトランジスタ2個を交換してしまいます。

既に前述していますが、これでスピーカーからサーノイズが増幅され出てきました。

最後に、カードで磁気を読み取り再生確認します。

ざんねーん!

ほぼ聞こえません。

アジマスを調整しても、どーやっても音量が出ません。やっと出たと思っても音質が悪いです。

そこで、磁気ヘッドの動作確認治具で確認しましたが、音量がとても小さいです。

磁気ヘッドの故障ですね。

トーキングカードプレーヤー用の磁気ヘッドは新品が入手できません。磁気ヘッド故障の場合は、中古部品を移殖する以外方法がありません。

前述の通り、たってのご希望でということで、フリマで磁気ヘッドが生きているCP-1200を入手し移殖します。

どちらも摩耗が進行していますね。

左が故障品で右が新たに入手した無事な移殖品です。

磁気ヘッド移殖動作確認

無事再生できるようになりました。

音量も音質とも問題ありません。

アジマス調整の際にネジを折ってしまうなどハプニングもありましたが、なんとかここまで来れました。

調整後は、最適位置でネジ類とネジロックしておきます。

隅々まで綺麗にして組み立てます。

動作確認

いろいろ故障箇所が多岐にわたっておりましたが、思い出のお品物ですので、無事カード再生できるまでしゅうりできました。

しっかり修理しフルメンテナンスも済んでおりますので、これからもより一層活躍してくると思います。


再び懐かしいカードの再生音を聴くことが出来て感激しています。

音を聴いてそれぞれに昔の記憶が蘇ってきました。

子供4人が長く遊んだので、もう寿命だろうと思い、今回の修理が無理であればお別れをしなくては思っていたので、治療して頂いて感謝しています。

家族も喜んでおり、今度は孫たちが遊んでいます。

カードプレイヤーの修理を受けて下さり、ありがとうございました。

また大切に遊んでいきます。

~依頼者様のご感想より~