コンプリートセレクション 仮面ライダー新1号変身ベルト モーター修理

新1号変身ベルト

以前、他の変身ベルトの修理を行ったことがありましたが、今回は、1号ライダーの変身ベルトの修理依頼となります。※前回は、修理断念であったので、今回は気合が入ります。

さて、故障の症状は、ボタンを押しても、効果音は鳴るのだがタイフーンが回りもせず光もしないとのことです。

前回は、分解が困難な事案にて修理を断念したので、少々心配でありましたが、今回は、無事分解ができる設計構造でした。

駆動モーター部

電池を挿入しボタンの押下で効果音は鳴りますが、やはりその他はうんともすんともでした。タイフーンを指で押してあげると、無事に回りはじめるので、モーターの事案でよるある、長期間の保管によるグリスやブラシの固着でした。高い電圧を印加して回復する手法を時々耳にしますが、回路の設計仕様が不明であるので、モータードライバを破損させる危険性もあり、自分はその手法は行いません。以降は、無事回るようになりました。

さて、グリスの固着等が懸念されたので、モーターを分解し内部のチェックとオーバーホールを行います。

コミュテータ(整流子)
ブラシ

コミュテータの磨耗も削れ溝もなく綺麗です。ブラシも使用していないので、磨耗もありません。ブラシには、タミヤの接点グリスとロータの軸受けには、再グリスをしました。

ギア

ギア内部も念のため再グリスアップしました。最後に、無事電圧が印加されていることを確認します。

今回は、大切にされているお品物とお聞きしているので、無事修理ができてなによりでした。


【ご依頼者様のご感想】
私の子供の頃は1号ライダー全盛期で光回る変身ベルトが出た時で当時とても欲しかったのですが、そこそこ高価な物で買ってもらえず大人になってからこのベルトに出逢い買った当初は毎日回していましたが、ここ何年かは飾って眺めてましたが、久しぶりに回したら回らず当然メーカー保証も切れていて自分で直す能力もなく、調べていたところ瀧下様のHPを見てお願いさせて頂きました。HPには作業工程が事細かく記されておりこの方しかいないと思い御願いしました。大人の私の物まで直して頂きとても嬉しいです。また何かあったら御願いしたいです。

ケアベア トーキング ウィッシュ 電極腐食修理

ケアベア トーキング ウィッシュ

電池ボックスの電極腐食の修理依頼です。ボタン電池の液漏れにて電極が腐食し接触導通が取れなくなっていました。液漏れが酷い場合は、金属内部への侵食も進むと強度的に問題な場合もあり、その場合は、清掃、洗浄後に補強版や電極の交換などで対応します。

今回は、幸いに清掃および表面のルータ研磨で強度的、電気的にも問題ありませんでした。

長期保管時は、電池を抜いておきましょう。

※リスニングの力の無さを痛感しますが、全てではありませんが、以下文言をランダムに再生しているようです。

  • Wish a dream come true.
  • Because I have been like you.
  • Hi, I’m wish bear, I wish a happy there play.
  • Hand me if you want be fun.
  • Let’s play a ??? you fun to be with.
  • I wish a give me a hug.
  • Make a wish, I hope in come true.
  • I like you and hand me.

Benesse Talkpad 断線修理

ベネッセ社製トークパット(Talkpad)の修理依頼を外来勤務しているおもちゃ病院で受けました。修理に関する共有情報がありましたので、共有の意味を込めまして記事を公開したいと思います。

当初の故障は、タッチペンの断線でケーブルを接続のよい曲げ具合の場所で使い続けていたが、ある日とどめを刺してしまったようで、完全に断線してしまったとのこと。そこで、持ち主の方が、断線したタッチペンをご自身で分解し修理に挑まれたようです。その作業の途中で、ペン先の基板に配線された6本の配線の内、4本が基板から取れてしまい、その状態でおもちゃ病院にお持ちになられました。おもちゃ病院の会場での限られた時間では、修理を完了できなかったので、自宅に持ち帰り作業にあたりました。

成形後の残り配線

6箇所の半田のうち4本の配線が、どこに付いていたか不明のため、修理は不可能に近い状態です。単純に順列の計算をすると、4×3×2×1=4! と24通りの並べ替えのうちのどれかなのでしょうが、ムヤミに接続すると回路を破壊してしまうので、ここは自身の経験を活かし以下のような段取りで解析しました。

  1. 基板のシルクから配線の情報を得る。
  2. 測定器で観測した信号から素性を探る。
  3. 最後は、運に任せる。

接続不明である配線は、4本で、赤、白、黄色、クリアである。恐らく、赤は電源であろうと推測できます。さて、基板を拡大鏡で観察すると、以下のシルクが確認できました。

基板のシルク(拡大)
  • Vcc = コレクタ電源(CMOSイメージセンサーなので、Vddというツッコミは置いときます。) → 赤配線
  • EN = イネーブル信号 → 緑配線
  • LK = LOCK(!?)信号 → 青配線
  • DAT = データ(1本なので、恐らくシリアル) → 白配線
  • NC = これは、ノンコネですね。 → クリア配線
  • GND = GND → 黄色配線(黒でない点は、黒配線のないケーブルを使ったらなのでしょうが、これは紛らわしいですね。)

VccとGNDは、基板裏面にある、電解コンデンサからも容易に推測できたので、早速ですが、テスターで各配線の動作中の電圧を計測しました。GNDは、本体のGND共通でしたので、すぐ黄色配線と判明しました。また、Vccも3.0Vの出力が電源の印加と同時に確認できました。案の定、赤配線です。さて、残るは、白とクリアです。もう推測できる情報がないので、過去の経験から、たぶん有色の配線は、有意な配線だろうと勝手に決めつけ、クリア(透明)の配線は、ノンコネとしました。ここは、運に任せました。

また、ペン先の根本が断線しているので、少し余裕をもってケーブルをカットし、そこで皮を剥き半田付けをしテストを試みました。

配線結線仕様

動作確認前にイメージセンサーが、正常に動いているかも確認しないとイケないので、DATラインをオシロで観測しました。

DATの待機時の信号
さいしょにタッチをタッチ時のDAT信号

タッチペンでさいしょにタッチという開所にタッチさせたDAT出力の反応は、問題なさそうですね。ですが、オシロ上の波形では、反応信号は、観測できたのですが、本体が無反応でした。やはり何か結線に問題があったのかと思いきや、ケーブルの途中を少し握ると何やら反応がありました。ケーブルの断線は、まだ先であったのでした。

青線の断線

しかし、この箇所は、特に稼働に激しい箇所でもないのですが、不自然に青線のみ断線しておりました。断線自体の原因は、不明で釈然をしませんが、作業を進めます。配線の長さが、合計約10cmは、短くなっているので、本体内部のケーブルを引き出し代わりにフラットケーブルを代替えしました。一応ですが、基板の設計やオシロ波形からも、信号の速度は、数kHzオーダーですので、まぁ信号品質をそれほど神経質に考えずに換装しました。

フラットケーブル換装

診療カルテも記載して作業完了です。

ゴジラ 電極腐食修理

電動で歩くゴジラ

電池の液漏れによる電池ボックス内負極のトグロバネの腐食折れの修理依頼となります。電源スイッチを入れると、例の鳴き声を発しながら前進をします。

さて、電池ボックスの腐食状況ですが、バネの先端から約1/3が折れてしまっており、電池の負極に接触しておりませんでした。

液漏れ腐食バネ折れ

当初の修理計画では、バネ自体を新品と交換するつもりでしたが、交換は難しいことが判明。この電池ボックスを本体から取り出すには、接着されている塩ビの本体をはがし、状況によっては、下腹部まわりを割き開く必要が出てきたためです。製品価値を考え修理を方針を以下に変更。

★残された負極バネの錆を取り清掃し復活させる。

Bottom view

運良く、残されたバネ分で十分成形でき、無事電池との接触も取れました。錆取りは、ルータで研摩し粉を清掃し最後にコンタクトスプレーを吹いておきました。

腐食負極バネの蘇生

長期間保管される場合は、必ず電池を抜いておきましょう。


【ご依頼者のお声】

最近、恐竜に興味を持ち始めた息子に、私の母が、大昔のこちらのおもちゃを納戸から見つけて持ってきてくれたことから始まりました。
当初は手で動かして遊んでいた息子でしたが、本来の動くおもちゃとしての姿を見せてやりたいと思い、瀧下様にたどり着くことができました。
それと同時に、親としてなんでもある、物にありふれた環境にいる息子に物の大切さ、壊れたら直してまた使うということの尊さを感じてもらえればと思いました。
息子にはおもちゃを治してくれるお医者さんのところに行ってすこしだけ入院してくるね。と伝えました。
これからは無事に帰ってきたよろこびを感じながら楽しく遊んでもらえればと思います。

この親としての思いや願いを可能にしてくださった瀧下様には本当に感謝いたします。お忙しい中、こまめに修理の進捗状況を連絡してくださり、おもちゃにかける思いがこちらにも伝わってきました。今後も、この素晴らしい活動がいつまでも続くことを願っております。

この度は本当にありがとうございました。

SNOOPY & FRIENDS DIORAMA メロディIC基板 DFPlayer mini + ATtiny85 換装

SNOOPY & FRIENDS ジオラマ

メロディIC基板のCOB不良により代替え機能としてDFPlayer miniとATtiny85にてWAVファイルの再生機能をインプリした事例となります。

加藤工芸株式会社製スヌーピーとその仲間たちのジオラマ模型の修理依頼となります。底面電池ボックス(単三電池3本 4.5V)電源スイッチをスライドさせると電源が入り、本体を振動させると、内蔵された電子メロディが、ジオラマの各所に散りばめられた光ファイバーの光と連動して鳴り始め、さらに振動をさせると曲をスキップできる仕様となります。

故障の症状は、電源を入れると、振動無しに光ファイバーが光出し点滅を繰り返したまま、振動を与えても曲メロディがスタートせず、もちろんですが、スキップもしないということです。

恐らく、振動センサーの不具合ではないかと予想し、本体下部より内蔵の制御回路がのる基板を取り出し解析をしました。

内蔵基板

内蔵の基板は、3枚構成となり、上記画像でいうと、奥側の基板は、束ねた光ファイバーを点灯させるLEDドライバで三色を駆動できる基板となります。裏面にCOBにて制御ICが搭載されており、電源線の+と-線がメイン基板に接続されています。次にその下隣りにメイン基板があり、圧電スピーカーからの振動検知信号を入力しメロディIC基板への駆動信号を生成しています。また、一番手前に縦に接続されているのが、メロディICとなり、メイン基板からの駆動信号を入力し、メロディの駆動を行います。

メロディは、白線の先につながるスピーカーモジュールを直接メロディICが駆動しますが、振動検知信号が、トランジスタ2SC945のダーリントン接続で増幅され、最終段のLED駆動ドライバでLEDの駆動も行っております。

基板回路(手書き起こし):Bottom View

回路の仕様を確認すべく、基板の配線を手で追いました。主要機能の回路は、以下となります。

振動検知信号の増幅とLEDドライバの駆動

圧電スピーカーからの電圧の変位をダーリントントランジスタで増幅し、そのまメロディICに入力されます。また、さらに後段のトランジスタにてLEDを駆動させております。仕様の通り、メロディが流れるタイミングでLEDからの光も点灯される機能は、このように実現されていることがわかります。

さてさて、回路が判明しましたので、原因を追究すると、メロディICが全く機能していないことがわかりました。圧電スピーカーからの電位の変化によって増幅印加された駆動信号が全くメロディIC側に受け付けされておりませんでした。駆動信号の印加がなされているにも関わらず、メロディも流れず、またLEDの駆動信号も固定されたまま状況が変わらない状況をオシロスコープにて目視確認しました。裏付けとして電圧の変位を手動にて与えてもメロディが鳴り始めないため、メロディICのCOB不良を判断しました。

このメロディIC基板には、13曲のクリスマスのメロディが格納されて、残念なことに汎用的な基板ではないため、入手できない状況でした。本来は、ここで修理を断念するところですが、ご依頼者と相談の上、一部仕様を変更し、クリスマスのオルゴールを鳴らすため、マイクロSDカードのMP3再生モジュールを代替えで内蔵しマイコンにて制御を行うようにしました。

タカラトミー社のおやすみホームシアターでも使用したことのある、DFPlayer miniをATtiny85にて制御するようにしました。

要件は、以下のとおりです。

  1. FAT32形式の音楽WAVファイルをマイクロSDカードに保存再生できる。
  2. モノラルスピーカーを駆動できるようアンプが必要。
  3. 音量や再生曲順などの制御をマイコンを用いて行う。
  4. 振動検知によるメロディの演奏スタートとスキップ機能は、削除。
  5. 光ファイバーのLEDは、電源ONにて駆動開始し常時3色を交互駆動。
  6. スピーカーは、既存の本体内部の物を流用。

DFPlayer miniは、MP3のデコーダと2Wのモノラルアンプ、記録メディアとしてマイクロSDカードを搭載しており、百数十円という価格で入手できるため今回のインプリには、適切を判断し作業を開始しました。

自前で持ち得ていたプログラムは、Arduino Pro mini(ATmega328)向けでしたので、ATtiny85をArduino化し、そのままソースコードを流用できるか下調べをしました。結論としては、換装は無事できたのですが、ATtiny85をそのままArduino化しても、Fuse bitのデフォルト設定値で動作周波数は、8逓倍(1/8)されてしまうので、シリアル通信のbau rateを8倍にする必要があります。というか、fuse bitを書き換えればいいじゃんということもありますが、、、。

ATmega328シリアル通信波形(IP資産)
ATtiny85シリアル通信波形

実は、内部発信の逓倍の違いでシリアル通信が開通できていないことが判明するまで、時間を要してしまい、オシロスコープにて、過去資産の波形と問題の波形のbau rateがまったく違うのがわかった次第でした。お恥ずかしい。。。

DFPlayer mini + ATtiny85

制御プログラムは、至極単純でシリアル通信の前設定をして、ボリューム値、再生コマンドを送出後、スリープさせるという内容です。しかし、無事インプリも完了し、テスト視聴の最中に新たな問題が検出されました。

もともと、恐らく単純な音階のメロディを奏でるICと思われますが、本MP3(厳密には、WAV形式)モジュールでの再生では、スピーカーの高域の帯域が足りなく、音割れをおこしてしまいます。また、不定期に予期せず発信ノイズが、起こり原因も電気的ではなく、どうも本体内部の機械的な問題で共振が起きているようです。

内蔵のスピーカーは、本体内部に接着固定されており、構造的に分解し取り外しての解析が不可能であるため、この点については、ご依頼者様のご理解を頂き、そのままの状態で今回の作業は完了としました。


【ご依頼者様のお声】

壊れてしまい再購入を考えたのですが、古い商品のため八方探しても新品が見つかりませんでした。

「亡き母がクリスマスシーズンに楽しんでいたこともあり、できることなら再びメロディを奏でてほしい」、そんな思いで修理をお願いできる先をインターネットで探している中で、瀧下さまの存在を知りました。

瀧下さまには問い合わせから引き渡しに至るまで、実に丁寧で誠実なご対応をしていただきました。たいへん感謝しております。

診察内容の詳細なご説明はもとより、代案のご提案など、心から信頼できるおもちゃドクターだと感じております。

予定よりずっと短い期間の中で、あれだけ丁寧な分析/対応を、しかも無償でしていただけたとは、感激です!

瀧下さまにお願いしてほんとうによかったです。

また機会があればぜひお願い致します。

この度はお世話になり、ありがとうございました。

重ねて御礼申し上げます。


インプリに使用しました、DFPlayer miniは、こちらより購入できます。

ソーラーライト シルエットライト 電源スイッチ故障

屋外用のソーラーライトの故障修理依頼です。屋外に置いておいて、日中の日光が当たっている間は、内蔵の充電池に充電し夜間は、その充電した電力でLEDを点灯させるものです。

屋外に置いておいたところ夜間に点灯しなくなったとのことです。早速分解し調べてみたところ、電源スイッチの接触が、腐食のため悪くなっておりスイッチがONになっておりませんでした。そのため、内蔵のニッケル水素電池の容量も低下し、充電を夜間の点灯もできていない状況です。

屋外での使用ですので、スイッチの端子を清掃し接触を復活させても、いづれは再度腐食にて接触不良を起す恐れがあります。製品の設計上、防水に関してコストをかけることができないため、湿気の進入を防ぐことができないため、やむなしというところでしょう。

しかし、可動部分ですので、腐食を防ぐ他の方法を検討する必要があり、また内蔵部品もLED用専用ドライバICで、汎用的に国内では入手できないため、末永く使用するには、抜本的な検討が必要です。※今回は、現状普及までとし、抜本的な対策は宿題としました。

無事点灯充電できるところまで回復し今回の作業は終了としました。

さて、今回は、回路図を起し内部を解析してみました。

ANA618制御回路

ANA618というTO-94パッケージに収められた4本足の制御ICが目につきます。ざっくり説明をすると、電源は、1.2Vのニッケル水素電池の電圧を電源にしていますので、この充電池の電圧が取れない時は、ウンともスンともしません。

日中のソーラーパネルからの充電圧を検知すると充電モードになり、夜間のソーラーパネルからの充電圧が無い時は、インダクタに数kHzのパルスを与え昇圧しLEDを光らせます。

同様な物に、100均のソーラー外灯もあり、参考にこちらも回路を起してみました。

YX8050

基本的な構造は、一緒ですが、使用されている制御ICが異なりソーラーパネルと足の接続が異なりますので、そのままの置換はできません。

屋外向けのソーラー充電型のLED外灯は、制御ICだけでも数種ありますので、故障の際は、修理をするよりは、回路基板毎に換装が工数的にもコスト的にもよいのかもしれません。※環境的ではないですが、、、。

タカラ RCジェットモグラ 液漏れ修理

サンダーバードに登場するジェットモグラのラジコンの修理依頼です。※自分は、サンダーバードをよく知らないのですが、でかいドリルが先端に付いた本体、地底を穴を開けながら突き進む、何らかのマシンなのでしょう。80年代に発売された、まだタカラとトミーが合併する以前の商品のようです。

昭和レトロ風な操縦用の送信機が付いており、本体下部のキャタピラ(以降、シャーシ)を操作するコントローラと本体上部のモグラ部を操作するコントローラが、それぞれ分離できて別々に操縦にできるようになっています。シャーシは、27MHzの無線操作で、モグラ部は、赤外線による無線操作となります。

さて、依頼内容としては、たいへん思い入れのある本品ですが、本体内蔵のニッケル水素電池が液漏れを起しており、全く動かないそうです。

ご依頼者様は、既に自力での修復を試みられ(そして、断念!?されたのか、、、)数台分の中古パーツを収集されて居られ、それら一式も同封の上でのご依頼でした。

★何としても修復をしたかったのという熱意が伝わってきます。こちらも気合が入ります。

さて、状態を把握するため、まずはシャーシ部の調査に着手しました。

画像からは、分かりづらいですが、ニッケル水素電池からの液漏れが、メイン基板と配線の全体に及んでおり、特にPCB基板の端子、ランドの半田部分の腐食が酷く半田コテで修復も不可能な状態でした。

  • 半田上の酸化層によって300℃程度温度では、容易に半田が溶解してくれない。同じくPCB基板上のランドの銅層も腐食のため、剥がれや欠損が発生。
  • 配線の心線にも腐食が伝わり半田がのりません。というか、容易に折れてしまいます。
  • 電源スイッチも下記の通り内部腐食し代替えの同サイズのスイッチも手持ちがないため、スイッチの分解清掃を実施。

腐食基板も同封の使えそうな基板を目視で選別し半田ランドの清掃と配線の全交換を行いました。ここまで腐食は酷い場合は、通常修理不可能として、ごめんなさいをするのですが、ご依頼者様の意向に応えたくがんばりました。配線は、以下備忘録として図面を作成しました。

これで、無事シャーシ部の換装が完了と思いきや、左chのキャタピラの動作がなんかおかしい。回転が遅い。調べてみると、アンテナ線が弛んでギアに接触しておりましたので、調整。以上にてシャーシ部分の修理は、ほぼ完了なのですが、他の本体からの移植が問題だったのか、底辺のネジを普通に締めるとギア軸への負荷をなり回転が遅くなる事態になりました。ネジの締め圧の微調整も必要な事態でした。

ここまでの作業に延べ時間で12時間ほどを費やしており、かなりの疲労でしたが、次なるモグラ部の修理作業に取り掛かります。

こちらも液漏れによりPCB基板および配線、スイッチ一式が腐食状態。

シャーシ部同様にPC基板を良品と交換し配線を全交換を実施しました。電源スイッチもご覧の通り腐食が酷くこちらも清掃。

 

基盤の換装に際し、目視レベルにて使用できそうな基板であっても素子パーツが故障している事態に遭遇し困り果てておりました。

半田表面に腐食は発生しているが、動作自体はできそうな基板を探しました。腐食した端子は使用できないため、接続された他のランドを探し出し配線しました。かなりの疲労となりました。

最後にモグラ部再度のキャタピラですが、用意いただいたキャタピラの半数が、切れて使用できない状態で、残りも何とか装着できるレベルではあるが、ギラによる駆動は、できない状況でした。この点は、修復不可能ということで、今回の修理は、完了としました。

今回は、補修パーツが、豊富が用意できていたことと、私自身のチャレンジも含めがんばった結果、何とかほぼ動作するまで修復できました。

通常では、腐食基板は復活できないことがほとんどですので、くれぐれも液漏れには気を付けていただくことが、長く遊べる秘訣ですね。


【ご依頼者様のお声】

難しい修理だったと思います。
ありがとうございました。
ドクターには、2度目の修理依頼です。
修理内容等、きちんとご連絡いただき安心と信頼を感じる修理対応。
大切にしたいおもちゃだからこそお任せできます。
感謝の言葉しかありません。
今後ともお願いできれば幸いです。


Complete Selection Modification HOPPERZECTOR スイッチ取れ 修理

コンプリート セレクション モディフィケーション ホッパーゼクターという、おそらく仮面ライダーの変身ベルトの修理依頼です。※高級感満載のカッコイイ変身ベルトという感じです。

なんと!予約販売の限定商品らしく、レア商品ということで、たいへんお大事になされていた商品の修理依頼です。

故障個所は、ベルト前面バックルに付属のバッタ!?をスライド接続させます。すると、バッタ本体からカッコイイ音声が流れるのですが、はまったことを検知するのに、底面に検知スイッチが使用されております。

ここです。実は、このバッタには、表と裏があり、どちら側をスライドさせても反応するように設計されております。

白く見えるガワのスイッチのツメが取れているのがわかるかと思います。マウスのクリックのように、スライドされてベルトのバックルがここに接触すると、ツメが押されてスイッチが入るという構造です。この片側のツメが取れてしまって、片側の反応ができなくなってしまったということです。

さて、取れたツメを両面テープで小マイナスドライバーの先に貼りましてバッタ本体のガワにはめてみると、はまらないというかはめられない事態が起きておりました。

画像の通り、ツメは、はめ込むシャフトがあり、このシャフトを軸に下へ押し込まれ接点に接触し反応するようになっております。しかし、軸受けが損傷して軸のサイズより広がってしまっており、はまりません。また、あったであろうバネも紛失してしまっておりました。

さて、さて困りました。バッタ本体を分解しスイッチ自体を交換できるか検討しました。目で見えるネジは、3本ですが、隠しネジが三本ありそうです。蓋が接着されております。また、上部の接合部分も接着されているので、分解するには、隠しネジの蓋をこじ開け接合部分の接着も割りを入れることになります。

しかし、この製品の性格上傷や割れは、製品価値の観点から致命傷になりかねないので、依頼者に相談をし、商品破損のリスクを承諾の上、分解を進めるかを相談した結果、この状態のまめ返送することになりました。


マミートーク 電源スイッチ 修理

正常に起動しないというご依頼でした。修理依頼のよくあるマミートークなのですが、過去に依頼のあったペンのタイプは、二種類で、今回のは充電台に乗せて充電するタイプですね。

さて、不具合の症状は、電源投入時に正常であれば、”Hi, Let’s go play with mommy talk !(訳:ハーイ、マミートークと一緒に遊ぼうよ!)”といういう起動音声が流れるのですが、ごくたまに無事起動し音声が流れることもあるそうですが、普段の殆どは、普通に起動しても起動音が流れないということでした。

まったくのウンスン(訳:ウンともスンとも)であれば、バッテリー系やスイッチ系を疑いますが、正常に流れる時もあるということであれば、以前依頼のあった、前例の基板のコネクタが抜けた事例を予想しました。

開封し中を確認すると、予想した通り、基板のコネクタが抜けかけておりました。

このコネクタの抜けは、マミートーク自体の遊び方に原因もあって、読み取りカードに強くタッチすると、その振動でコネクタが緩んでしまうようです。なおで、元の状態に差し込んでもまた、振動で抜けてしまう恐れがあるので、ホットボンド(グルーガン)で固定しました。


これで安心と思いきや、起動の不安定は、まだ解消できておらず、さらに原因を探すと電源スイッチの接触がどうもおかしい。

かなり症状は、改善されましたが、やはり数回に一度電源が入らない。

症状と原因を合わせて考えると、コネクタの抜けも電源スイッチの接触不良も、どちらも不具合の原因なのだが、より深刻だったのは、電源スイッチで、基板コネクタの抜けは、どうも核心ではなかったぽいです。

こちらの電源スイッチの内部にコンタクトスプレーを吹き、スライドスイッチのON/OFFを繰り返しスライドさせ、接触を回復させました。

修復完了の判断は、電源投入を10回繰り返し、全てにおいて正常に起動し音声が確認でき、さらに読み取りカードの読み取りも問題なければとしました。

無事動作確認も取れ、今回の修理は終了としました。


【ご依頼者様のお声】

音声ペンの電源が入らなくなり、修理を依頼しました。瀧下様のおもちゃ病院にたどり着くまでは、販売元が破産していたことから修理は諦め、中古品を探しましたが見つからず、困り果てていました。
おもちゃ病院のドクターがボランティアでされているとは信じられない程、終始、迅速で丁寧なご対応をいただきました。 修理完了のご連絡を、確認用動画と共に送っていただけた時は、丁寧さに感激しました。
また再び家族で遊べることを喜んでいます。
おもちゃは数知れずあっても、好きなおもちゃはごくわずかに限られていると思います。おもちゃ病院のドクターは紛れもなく最後の救世主です。諦めきれないおもちゃなら、一度相談してみて下さい。自信をもって推薦します。


ハッピーイングリッシュ




アンパンマン クレーンゲーム ギアボックス 修理

外来勤務をしているおもちゃ病院にて、アンパンマン わくわくクレーンゲームの修理のヘルプ要請があり、対応を行った。

無事修理完了をしたが、備忘録としてギアボックスの情報を掲載する。※因みに、今回修理にあたったクレーンゲームは、以前修理したクレーンゲームからバージョンが変わっておりました。製造コストなどの削減のためか構造が簡素化されております。

修理の依頼内容は、バケットを上げ下げする鎖が切れてしまったとのことだったが、鎖の接続修理後に正常に動作しなくなったとのことで、修理のヘルプ要請を受けた。

正常に動かない症状とは、電源投入後にスタートするクレーンの規定位置に戻る際にバケットが垂れ下がったままになり、以降上げ下げもできなくなっていた。

修理は、ギアボックスを分解し、巻き上げ下げを行うプーリーおよびギアを解析した。原因は大きく2つあった。

  1. 分解した際にギアボックス上面のスリットに出ているギアがスリットに接触しており、その接触抵抗によって、内部のトルクギアが滑っていた。
  2. バケットを開くプーリー②(後述参照)に接続される止めストッパのはまり具合が不味く、ギアが回転できなくなっていた。そのため、こちらの要因でも内部のトルクギアが滑っていた。

接触していたギアは、位置調整を行い、止めストッパは、はまり具合を微調整することによって無事終了完了した。

さて、本投稿では、この修理の際にギアボックス内部を解析し、どのような仕様になっているか資料化した。備忘録として掲載する。

まず、クレーンの動きを明確にするため、軸方向を以下のとおりに定義する。


クレーンの動き方向定義

クレーンの移動方向とギア位置

おもちゃの正面から向かって3D軸をそれぞれ、X/Y/Z軸で以降では呼ぶこととする。クレーンの移動方向とギア位置図の通り、移動に寄与するギア位置は、図の場所にある。次にギアボックス内部を説明する。クレーンのギアボックスは、全部の三層の構成からなり、本投稿では、最上面を上面、次の層を1層、次の層を2層と呼ぶ。それぞれのギアボックスの層内は、役目の異なるモーターとギアが内蔵されており、単に分解するだけでも、手ごわい内容となっている。


クレーンのギアボックス

ギヤボックスの内部は、リード線の引き回しが極端に短く、またギアボックスを開けるには、短いリード線に接続されたモーターも持ち上がるため、その反動でギア部品が、バラバラになってしまうことが多々ありました。作業を行っていると、そのリード線の半田付けが取れてしまうなど、もうイヤになってしまい、くじけそうになるが、あきらめずに何度もチャレンジしました。



上面部分の情報としては、ギアボックス内部に通っているリード線の色を明記した。


ギアボックス1層目

1層目は、モーターからの動力の伝わる経路とバケットの開閉および上げ下げについての情報を図ギアボックス1層目に記載している。本修理も、バケットの開閉と上げ下げ部分に負荷がかかり、前段のトルクギアで動力がなくなってしまっておりました。分解の際もこの点に注意してみるとよいと思います。ギアボックス2層目は、X/Y軸移動用のギアとモーターとなります。


2層目は、X/Y軸の移動用のギヤがぎっしりです。